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帰郷、そして…そして
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 再開した暁月と一緒に上越市に来て、色々あった。
 本当に色々あって、特にお姉ちゃんを見たときの暁月の反応は……、言っちゃあ悪いけど、あの慌てぶりは面白かったかな。
 まあ綾姫様に似てるから仕方ないよね。
 その後お姉ちゃんが蔵から持って来てくれた家系図で、瑠璃丸くんが私の家のご先祖様だって分かって。
それから暁月はお姉ちゃんに捕まって、謙信様のお話を延々とさせられて。
 でも何だか暁月、楽しそうだったな。
「ぼーっとして、どうしたんだ?」
 翌朝、私達は東京に戻る為に駅への道を歩いていた。
「まさか、泊まることになるなんて思わなかったなって」
「ああ、俺もこんな事になるなんて思わなかった。お前の姉ちゃんって、凄いな」
「?」
「この時代に居ながら、御屋形様の事あれだけ知ってるなんてな」
「お姉ちゃん、謙信様の大ファンだから」
 『謙信様クイズ』とか、大変だったんだから。
「ま、そのおかげで真奈でも御屋形様のお役に立てたんだもんな」
 はいはい、感謝してますよ。
 ……………。

(ウソ)

 正面から歩いてくる人を見つけて、私は足を止めた。
「真奈?」
「暁月、あれ。あの人」
 暁月が息を呑むのが分かった。
 段々と近付いて来るその人から、私達は目を離すことが出来なくなった。
 間違えるはずがない、私達が、暁月が彼の顔を見間違うはずがない。
「翠……?」
 つい零れてしまった。
 そんな呟きが暁月から漏れる。
 これは、この人の名前じゃない。そんな事暁月も分かっている。この名は、この人とは関係ない名前だと。
 なのに、その人は私達の前で足を止めて不思議そうな顔をした。
「……あの、どこかでお逢いしましたか?」
「え、いや」
 口ごもる暁月を不思議そうに見ながら、その男の人は戸惑いながら口を開いた。
「私の名前は、翡翠の翠と書いて、みどり、と読みます。ですが親しい友人は、翠と。ですから……どうしてでしょう、あなた方を見ていると、とても懐かしい感じがする……」
 彼が困惑しながらも、何かを思い出そうと必死なのが伝わってくる。
「ずっとまえから、知っているような気が……」
 私は、今にも泣きそうになりながら笑みを浮かべた。暁月を見上げると、暁月も何かを堪えるような顔をしている。
「あ、かつ、き?」
 ふと思い当たったように、暁月の名を口にした。
「あ、ああ」
「貴女は、……真奈?」
「当たり、です」
「不思議ですね、初めて会ったはずなのに、とても懐かしい感じがします。まるで、遠く放れてしまった親友に、やっと逢えたような」
「ええ、私もです」
「あなたも?」
「暁月も、そうだよね」
 何も言えなくなってしまった暁月の変わりに私が応え、そして笑う。翠炎―翠もいつの間にか困惑が消え淡い笑顔を浮かべている。
 暁月は、とても変な顔をしていた。
 痛いような、泣きたいような顔。
 でもそれは、悲しいからでも辛いからでも無い。
 嬉しいからだよね、暁月。
 私達は四五〇年の時を越え、再び巡り逢えた。

 + + + 

   そして……。
「暁月、また翠と遊びに行ったでしょ?」
「なんだよ、いいだろ」
 暁月と翠は、今では何年も共に過ごした親友のような関係になっている。
「ねえ、今度会いに行くときは私も誘ってよ」
「駄目だ」
「何でよ、暁月ばかりずるい」
「いんだよ、こういうのは男同士がさ」
「もー、けち」
それはもう、私がちょっと、焼いてしまうほどに。


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